− 店舗デザイン − ローコストで付加価値を高める方法 【内装工事編】 NEW !
内装工事を行う際に、インフラ工事や設備工事、調査の段階で想定が困難であった修繕工事等にコストがかかり、当初計画していたデザインを実施できなかったといったケースが良く見受けられます。
また、近年は建築資材の高騰により設計・見積り計画をしている最中でも随時資材が高騰していき、最終的に予算が合わなくなって施工の実施に移れず、計画が破綻してしまった事例もあります。
今回の建築コラムでは、内装費の予算がオーバーしてしまい理想の空間を創造することが困難になった場合でも、アイデアとデザインで付加価値を加え、ローコストでも高級感のある空間を演出して利用者の満足度を高める手法をご紹介します。
①コストをかける空間とかけない空間のメリハリを最大限に活かす。
エントランスと長く滞在する場所のパーソナルスペース、トイレに関しては特に利用者の目や手に留まりやすく満足度に影響を及ぼす空間なので、ゆとりのあるスペースの確保と一部分でも良いので目を引く場所に可能な限り高品質な内装仕上げ材を施したり、高級なアイテム(照明器具や家具等)を配置したりすると満足度を高めるのに効果的です。
比較的に安価な素材である床材の塩ビタイル、天井・壁材のビニルクロスに関しては、木目調や石目調、レザー調等の様々なデザインパターン素材の品質が向上しており、専門職でない一般の人から見れば本物と見分けがつかないくらいの精度となっているため、空間全体のベースとなる8割くらいの面積をこのような素材で構成し、残り2割程度に高品質な素材を持ってくる方が付加価値をより高めることが出来ます。
②コストをかけない空間は、安価な素材でも偽物に見えにくいリアリティのある素材を選定する。
高級な空間において一つでも安価な素材を使用したり、量販店でよく見かけるような物を設置したりすると、せっかくコストをかけたのに一般的によくある空間に感じてしまうことがあります。
それは、高級な空間に一つ普通なものがあると無意識的に空間全てが普通であるという感覚を利用者に与えてしまい、空間の価値を下げてしまうことになります。
例えば壁のクロスに関して言えば、タイル調の素材を選んだ場合、本来タイルは表面の凹凸や素材のムラ等の風合いがありますが、それをクロスでは表現しづらいので、どうしても偽物感が強くなってしまいます。
一方、木目調や織物調のクロスは素材の凹凸や濃淡があまりなくてもリアリティのある素材感を表現できており、本物に近い印象を与えることが出来ます。また、床の塩ビタイルに関しては、彩度が低めの石目調で目地加工がされている素材を選定すると、目から足元までの距離が少しあることもあり、一般の人は本物の石と区別がつかなかったりします。
コスト面で言えば塩ビタイルは1㎡で5,000円程度ですが石タイルですと1㎡で1,5000円ぐらいかかり、面積が広ければ広いほど、大きなコストの差が出ることになります。本物に見えやすい素材を多用し、ポイントで最高品質の素材を使用することで、逆に全ての素材が高品質に感じられローコストでも利用者の満足度を上げられる空間を創造することが出来ます。
③空間のアクセントとして独自性の高いデザイン要素を盛り込む。
単に高級な素材を使用してもそれは高級な素材としての価値はありますが、それ以上の価値はありません。その素材をどのように利用するか考え、デザインやアイデアと融合させることにより唯一無二の高級な空間へと昇華させることができます。
また、逆に安価な素材でも、素材の組み合わせとアート的な要素を融合させることにより、他のデザイナーや一般的に良く見るような高級な空間とは差別化でき、内装に対してプロや一般の人が高コストだから高級な空間であるとか、低コストだから一般的な空間であるといったこととは比較のしようがない独自性の高いデザイン空間を演出することが出来ます。
例えば、床材をただ張るだけでなく、異なる色や素材の床材をMIXさせたり、オリジナルの形状に加工して独自のパターン張りを考案したりすることで、同じ材料費であってもデザイン力と作業手間をかけることで付加価値のある高級な空間とすることが出来ます。
また、オリジナルのロゴや紋様をデザインし床・壁・天井、または家具等にこれらの要素を取り込み内装と融合させることにより、ここでしか感じ取れない特別な空間を創造することも出来ます。
以上、今回は3つの例をあげてローコストでも高級感のある空間を演出し、利用者の満足度を高める手法をご紹介しましたが、この他にもたくさんの手法がありますので内装工事をお考えの方は今回の建築コラムを頭の片隅にでも入れていただき、実施される際にお役に立てれば幸いです。